――序文――


  20XX年――世界はそんな、使い古された言葉で表現できる。
  日常というものは相も変わらず。人類は文明と常識という光で照らされている。

  ――舞台はそんな、『表』の『裏』。

  常識の裏にある非常識。
  日常の裏にある非日常。

  光の反対、そこは影。
  こちらではなくあちら側。
  『ありえない』が跋扈する場所。

  非常識。非日常。超常現象。都市伝説。廃棄物。
  そんなおかしいモノが集まる吹き溜まり。
  路地裏。廃墟。シャッター街。ゴーストタウン。
  舞台はそんな、雑多に汚れた日陰の場所。

  ――裏の世界。

  そこに住まうは、世捨て人、狂人、廃棄物、
  疎まれ者に嫌われ者、脱落者、社会不適合者。
  いずれも表の世界では理解されない、生きていけない者ばかり。
  だけでなく。
  ケダモノ、バケモノ、幽霊、ロボット、宇宙人、天使、悪魔、概念――
  有機物に無機物、それらを超越した未確認存在。
  更に更に。
  超能力。魔法。怪奇現象。超常現象。都市伝説。

  どんな『ありえない』も、どんな『非日常』も、そこにはある。
  表の世界の住人は、理解を超えた未知のそれらを、世界の裏側を、このように形容する。


  都市伝説(フォークロア)と。


  ――あなた達はそんな、裏側の世界の住人。
  馬鹿馬鹿しく、生々しく、意味もなければ乱痴気で。
  クレイジーでバイオレンスでパラノーマル。
  どこもかしこも異常に染まりきった存在。

  これは決して、勇者が姫を救うような壮大な話ではなく。
  異能を用いて悪を討つ痛快なドラマでもなく。
  法律違反とヤクと銃が主人公のクライムアクションでもなく。
  不恰好な裏側の住人が不恰好に生きていくだけの……日常(ものがたり)。