『HAPPY END』

PC数:2人
所要時間:オンセで3〜4時間程度

GM兼任PLを強く推奨
PCロスト系シナリオです。


<予告>
 夜空に落ちて死ぬなど美しいじゃないか。
 地面に潰れた死体をみっともなく広げることもなく、ただ天国に落ちて消えるのだ。
 それを、愛するあなたとできるのならば。
 それはとても美しく、とても素晴らしく、とても幸福なことに違いない。
 さぁお手を拝借。
 どうか一緒に死んでくれ。


<シナリオ概要>
 ある夜、月が空の天辺に昇る時、重力が逆様になる――そんな都市伝説(フォークロア)。
 PC二人は一緒に死のうと思った。だからそんなフォークロアを使い、一緒に夜空に落ちて死ぬために出かけるのであった。
 心中するか、やっぱり止めておくかは、二人次第。


<オープニング>
 とある路地裏、二人は出かける。
 空は月が昇ったばかり、夜が始まったばかり。
 どういう事情で心中に至るかどうかはPC同士で決めるといいだろう。
 導入例としてはGM兼任PLのPCが、もう片方のPCを誘った、など。
 オープニングで持ちかけて了承するという演出でもOK。

 月が天辺に昇るまで時間がある。
 PC達は折角だし月が綺麗に見える場所へ向かうことにしたのであった。


<ミドルシーン>

※裏の世界イベント表を適宜回すのもOK。

▼シーン1
 無人のはずの廃火葬場から煙が棚引いている。
 そんな路地裏でPC二人はおにごっこをすることに。

 どちらかが鬼。GM兼任PC側がなると良いだろう。
 どちらが勝つかは以下の表で1d6で決めてもいいし、自由に決めてもいい。

・普通におにごっこ→お互いにクレイジー技能でダイスロール、判定値が下回った方の勝利。
・ふんだんに俺ルール発動→クレイジー。判定値が上回った方の勝利。
・知略合戦→バイオレンス。判定値が下回った方の勝利。
・体力勝負ガチダッシュ→バイオレンス。判定値が上回った方の勝利。
・路地裏の不思議な影を看破しつつ鬼ごっこ→パラノーマル。判定値が下回った方の勝利。
・魔法などで化かし合い→パラノーマル。判定値が上回った方の勝利。

 一通り楽しんだらシーンエンド。


▼シーン2
 廃墟の楼閣に辿り着く。
 やたらキッチュな作りだ。

対象:全員(一人でも成功すればOK)
目標:クレイジー判定で4以下。
成功:ここ、大人のホテルだ……。
失敗:なんかハデな建物だなー。

 中を探索すると、古びたノートが一冊落ちているのが見つかる。
 まれによくある(かもしれない)、記念に一言メッセージを書き残すような趣旨のノートだ。
 中を見ると、「XXXX年、(名前)(ハート)(名前)」のような、あんまり頭が良さそうとは思えないコメントがちらほら。
 ノートにはエンピツが一本、紐で繋がっている。
 記念に何か書いたりするといいだろう。


▼シーン3
 朽ちた墓場に辿り着く。
 誰かが埋葬されなくなって久しいようで、どの墓標も朽ち果てていた。文字すら読めず、雑草だらけ。
 ふと、何かが居る気配がするような……?

対象:全員(一人でも成功すればOK)
目標:パラノーマル判定で3以下。
成功:
 目を凝らせば、墓標が並ぶ中で天使が跪いて祈りを捧げている。
以下天使台詞例
「おや。どちらに行かれるのです、こんな夜に」
「空に? それはそれは……。では、埋葬の必要はなさそうですね」
「あなた方の旅路に幸運を」
「私はここで……祈りを捧げています。星に、死者に」
「……死んだら者はどこへ行くのでしょうね?」

※天使は死ににいくことを咎めたり止めるようなことはしない。

失敗:
 何も居ないようだ……?
 なんだか気のせいだったようだ。
 と、足元になにか、ほのかに光る不思議な羽根を見つける。
 それは風に吹かれて、空に吸い込まれていった。
 ふと君達は思う。死者はどこへ行くのだろう? と。

 以下描写は成否共通

 彼方に大きな、廃墟のビルが見える。
 あの屋上からなら、月が良く見えそうだ。


▼シーン4
 高いビルを上っていく。
 廃墟であちこち崩れていて大変だけれど、二人で手を取り合って協力し合って進めば大丈夫だ。
 窓の外では夜の街が見える。
 彼方には表の世界、文明の光の集合体。
 時折、ガラスの剥落した窓の外で、光る金魚が空を悠々と泳いでいくのが見える。

 GM兼任側のPCで、「相手の好きなところ」を伝えよう。そして、相手から「GM兼任側PCの好きなところ」は何か、と問いかけよう。

 一通り想いを確かめ合った所で、屋上へ続く最後の階段に辿り着いた。
 階段を上り、屋上へのドアを開ければクライマックスへ。


<クライマックス>
 屋上に辿り着いた。
 広く、そして誰もいない。何も聞こえない静寂。
 月が眩しすぎて星すら見えない。
 見上げれば一面に空。まもなく月が空の天辺にくる。

 このまま屋上にいれば、二人は空に落ちて死ぬこととなる。
 廃墟に戻れば、死ぬ運命からは外れるだろう。

 本当に死ぬか生きるか、PCの決断に委ねること。

※ここでPC同士で戦闘をして、殺し愛をしてもOK。


<エンディング>
▽屋上に残る
 月が空の天辺にくる。
 重力が逆様になる。
 ふわりと二人の体が浮き上がる。
 そして二人は、二人で一緒に、満月の夜空へとどこまでも落ちていく――。


▽廃墟に戻る
 月が空の天辺にきたようだ。
 外では重力が逆様になっているらしい。
 窓から空に落ちる色々なものが見える。
 だがそれもまもなく、世界は普通の夜に戻った。
 西の地面に落ち始めた月が、生きた二人を照らしていた――。