『The Little Girl Lost』
※情景描写は演出はあえて控えめに記載している。GMは好きなようにハチャメチャな演出をすること。
PC数:2〜5人
所要時間:オンセで4〜5時間程度
オフセで3時間程度
<シナリオ概要>
PC達は泣きじゃくっている少女と遭遇する。彼女の顔は包帯で覆われている。
PC達は彼女に事情を聞くが、彼女は泣いてばかりで何も答えてはくれない。
泣き止ませると、彼女が表の世界から来たことと、彼女が迷子であることが分かる。
迷子を表の世界の家にまで送り届けることになるPC達。
だが迷子の家の直前で、通報を受けたという警察と戦いになる。
戦いの後、迷子の母親が登場する。警察は、迷子の母親から通報を受けたことが判明。
母親から真相を告げられる。
迷子は人気ジュニアアイドルだったが、収録中の事故で顔に酷い傷を負い、バケモノのような風貌になってしまった。
アイドルとしての輝かしい未来を閉ざされ、おぞましい顔になった以上、これ以上生きていても苦しいだけだろうと母親は思った。しかしその手で我が子を殺める度胸もなく、その子を捨てたのだ
だがその後に後悔が湧き上がり、母親は警察に連絡、迷子を捜すことにした。
母親は泣きながら自分が間違っていたことを謝罪し、迷子と再び暮らすことを希望する。迷子はただ、PC達を見ている。
PCは迷子を元の家に帰すか、裏の世界に連れて帰るか二つの選択を迫られる。
選択を終えたらシナリオエンド。PC達は裏の世界に帰る。
<オープニング>
ここは地球のとある場所、裏の世界。
裏の世界の住人であるPC達は銘々の日常を送っていたが、女の子の泣きじゃくる声を聞く。
声のする方に一行が向かえば、頭部をすっかり包帯で覆った小さな少女が独りぼっちで泣いているのを発見。
・年齢的には小学校低学年ぐらい。
・PCがいかなるアプローチをしても彼女は泣いてばかりである。
特に、PC内に人間ではない外見の者がる場合、あるいは脅すようなロールプレイングをしたPCがいた場合は、怯えていっそう泣くといいだろう。
適宜タイミングでGMは「今は何をしても話しにならないようだ」とPLに伝えること。
・包帯について。包帯に血は滲んでいない、痛がっている様子はないことから、『包帯の下』が泣いている原因ではないことをPCに明かすこと。
無理矢理外そうとすれば少女はものすごく嫌がってますます泣く。それでも外そうとしたら、「もしここで無理矢理少女の包帯を外した場合、彼女は怖がって二度と君達に心を開かないだろう」と宣言し、外させないこと。
一通りPCが彼女にアプローチをしたところで、通りかかった裏世界の住人が「とりあえずその子を泣き止ませたらどうだ?」とPC達に話しかける。
「聞いたことがあるぞ。女の子っていうのはな、ちいさくて、ふわふわしていて、カワイイものが好きなんだ。探してみたらどうだ?」
ここで判定発生。
判定者:全員
目標値:クレイジー判定3以下
成功:『ちいさくて、ふわふわしていて、カワイイもの』=ぬいぐるみ。ぬいぐるみを見つけたらいいだろう、と気づくことが出来る。
失敗:『ちいさくて、ふわふわしていて、カワイイもの』=あなたは猫の死体を思い浮かべた。ちょっと気分が悪くなった。ヤルキ-1。
判定が終わったらシーンエンド。
<ミドルシーン>
▼シーン1:
少女は相変わらず泣いている。周囲にはガラクタがそこかしこに転がっている。
辺りを探せば、少女が泣き止むようなものを見つけられるかもしれない。
判定者:全員(一人でも成功すればOK)
目標値:クレイジー判定3以下。ただし、オープニングで判定を成功している者や、成功者から「ぬいぐるみを探せばいい」と伝えられた者は判定値に-1のボーナスを受ける。
成功:ふわふわのネコのぬいぐるみを発見!また、目標値から3以上下回った判定値を出したPCはガラクタの中から「クレジット1」入手。
失敗:ぬいぐるみは見つからなかった。疲れた……。ヤルキ-1。
ぬいぐるみを少女に渡せば、彼女は泣き止む。会話が可能になる。
ぬいぐるみが見つからなかった場合は、少女は泣き疲れたのか泣き止む。会話が可能になる。
・名前と年齢?
→アイリン、六歳。
・どこから来たの?
→「あっちのほうから……(向こうの方――表の世界がある方向を指差す」
・どうしてここに来たの?
→「おかあさんとはぐれちゃった……」
・いつここにきたの?
→「きのう……」
・お母さんに会いたい?(お家に帰りたい?)
→頷く
・顔はどうしたの?
→「ケガしたの……」「やけどした……」
(どうしてケガしたのか、誰にやられたのか、という質問に対しては「わからない」)
・顔の傷を見せて?(包帯とっていい?)(治療していい?)
→ものすごく嫌がる。またさっきみたいに泣きそうになる。
つまり彼女は表の世界からの迷子である。
答えられない情報については「わからない」「しらない」とべそべそしながら答える。
質問がひと段落すると、少女のお腹がぐぅと鳴る。また、昨日から何も食べていないことが告げられる。
と、そこへ美味しそうなにおい。あっちの方向には、裏の世界の食堂がある。そこへ向かうといいだろう。
PC達と少女達が食堂へ向かうと宣言すればシーンエンド。
▼シーン2:
裏世界の食堂は裏世界の住人でたいそう賑わっている。
好きなメニューを頼んでいい。だいたい出てくる。なおクレジットは消費しない(タダ飯という意味ではなく、持ち合わせが都合よくあったということだ)
注文するとまもなく注文品が運ばれてくる、が……それらに浮遊霊が憑依して飛び回り始めた!
判定者:全員
目標値:パラノーマル判定3以上。
成功:浮遊霊にも負けずにメニューを完食した。
失敗:浮遊霊にボコボコにされる……。ヤルキ-2。食べられることがなかったメニューはそのまま窓から外へと飛び出して、彼方へと飛び去ってゆく……。
騒ぎがひと段落すれば、食堂内は元通りの賑やかさに包まれる。
なお迷子のメニューについてはいつのまにか店主がどうにかしてくれたようだ。
迷子は君達のドタバタ劇(?)が愉快だったのか、楽しそうに笑っている。
店主が話しかけてくる。
「その子は迷子? 表の世界の?」
「表の世界に帰してあげないとねぇ……。アンタら、送ってあげなよ。勿論その子のお家の前までさ。そんだけ小さいなら自力で帰れそうにないだろうし……」
「表の世界に行くなら、怪しまれないように身なりは整えたほうがいいよ」(人外的風貌のPCがいる場合は、「特にアンタとかね……」などと発言)
「オススメのブティックを紹介してあげる。ここにいくといいよ。(と、地図を見せてくれる)『お代は結構です』が売りのすっごいお店。行ってみたら分かる」
会話がひと段落したらシーンエンド。
▼シーン3:
店主が教えてくれたブティックに到着するPC達。
そこには表の世界に紛れ込むための変装グッズや擬態道具、メイクアイテムが揃っている。
どんな異形でも、これらを使えば表の世界で問題なく馴染むことが出来る。
ショップ店員はニコヤカに「お代は結構です」と。
「わたくしめと少々、相撲をしていただければそれで……」
ぬらりと服を脱ぐ店員。ムッキムキである。
判定者:任意。最低一名
目標値:バイオレンス判定4以上。
成功:店員との相撲に勝利!ヤルキ+2
失敗:店員にブン投げられる。ヤルキ-2。
判定の成否に関わらず、店員は満足する。
「すばらしい試合でした……(衣服を整えながら」
迷子は拍手をしてPC達の健闘を称えている。
PC達は表の世界でも問題なく馴染むことが出来る変装を完了させる。
ついでにここでは服飾以外も扱っており、クレジットを用いてのアイテム売買も出来る。
店から出たらシーンエンド。
▼シーン4:
裏の世界から表の世界へ。
廃墟とガラクタの路地裏から出れば、そこは常識と秩序と人間の世界。
判定者:全員
目標値:クレイジー判定3以上
成功:周囲に満ちる常識と秩序という空気、だが非常識な君は全く動じない。
失敗:常識的に考えて『非常識世界の住人』がこんなところに来てしまったことに酷い場違い感と自己嫌悪を覚える。ヤルキ-1。
さて、迷子の家はどこだろうか……。
近くに看板がある。この町には、シンボルである立派な噴水広場があるようだ。
迷子「ふんすいのばしょ……しってる!」
噴水の広場まで迷子を連れて行けば、彼女の家の場所が分かるかもしれない。
▼シーン5:
噴水広場は表の世界の人間で賑わっている。
風船売りがカラフルな風船を売っている。迷子はそれをじっと見ている……どうやら欲しいようだ。
PCが風船売りに近付くと、彼はこちらを見て……
「むむ。お前達、裏の世界から来たな? ニオイで分かるんだ」
彼はフタマタであり、表の世界でこうして風船売りをしているのだ。
「悪いことは言わん、早く裏の世界に戻れ。いいから早く」
「説明すると長くなるというか面倒というか…… いいからすぐ戻れ!」
そう言って、風船売りはこちらに魔法をかけてきた!
判定者:全員
目標値:パラノーマル判定3以下
成功:風船売りの魔法など君には効かない。へのかっぱ。
失敗:風船売りの魔法で、君は無性にホームシックに襲われた。ヤルキ-1。
「あー、ええと、敵意はない、それは信じてくれ。むしろお前達を守ろうと思って……」
「……警察がうろついてるんだ。怪しいやつって思われたら問答無用だぜ。マジで危ない」
「それでも戻らないのか? ……じゃあ、まあ、くれぐれも気をつけるんだぞ」
(迷子については「知らない」と答える。ついでに風船もくれる)
迷子はキョロキョロしている。それから「ここしってる!」「あっちがわたしのおうち!」と歩き出す。
PC達が迷子についていけばシーンエンド。
▼シーン6:
しばらく歩いていると日も傾いてきて、夕暮れ時が近くなってきた。
迷子はキョロキョロしている。この先の道が分からないようだ。
「あかいやねのおうち……」「まどのかずは……」と家の特徴を教えてくれる。
皆で手分けして迷子の家を探そう。
判定者:全員(一人でも成功すればOK)
目標値:バイオレンス判定3以下
成功:君達はしっかり家の特徴を覚えており、しっかり探した。そのおかげで迷子の家を発見した!全員ヤルキ+1。
失敗:途中で家の特徴を忘れてしまって見つけられなかった。全員ヤルキ-1。
成功した場合は迷子の家を発見できる。
失敗した場合は途方にくれていると、迷子が自力で(偶然にも)発見する。
迷子の家に向かう一同だったが、ふと背後から声をかけられる。
それは警官だった。
「アイリンちゃん発見! 同時に誘拐犯と思しき不審人物と遭遇!」
「確保ーーーー!!!」
そう言って、警官が問答無用で襲いかかってきた!
<クライマックス>
警官との戦闘。
【警官】×2
ヤルキ:10
クレイジー :-1
バイオレンス:1
パラノーマル:-1
アイテム:
・警棒
バイオレンスで発生するダメージに追加で+1。
・解説
このエネミーは、戦闘では、自分のターンではバイオレンスでしか攻撃ができない。
また、片方のヤルキがゼロになった状態で、手番を消費して「目標値:クレイジー判定3以下」に成功した者がいれば、投降させることができる。
戦闘が終了すると、迷子の家から女性が大慌てで出てくる。
彼女は迷子の母親を名乗る。迷子も「ママ!」と彼女を呼ぶ。
と、その時だ。結び目がほつれていた迷子の包帯がハラリと落ちる。
彼女の顔は……見るもおぞましい傷跡で凡そ人間の顔面をしていなかった。
母親は泣き崩れながらアイリンに謝罪の言葉を繰り返す。
「ごめんなさい、ごめんなさい、どうかママを許して……あなたを捨てようとした愚かなママを許して……」
どういうことかとPCが尋ねれば、母親は真相を語る。
迷子は人気ジュニアアイドルだったが、収録中の事故で顔に酷い傷を負い、バケモノのような風貌になってしまった。
その所為で、もう二度とアイドルとして活躍することは出来なくなってしまった。迷子の友達も、彼女の崩壊した顔面を見て「バケモノ」「気持ち悪い」と罵り、離れていった。
アイドルとしての輝かしい未来を閉ざされ、およそ人扱いをされぬおぞましい顔になった以上、これ以上生きていても苦しいだけだろうと母親は思った。
しかしその手で我が子を殺める度胸もなく、アイリンを捨てたのだ。
だがその後に後悔が湧き上がり、母親は警察に連絡、迷子を捜すことにしたのだ。
「私が間違っていたわ。私は母親なのに。どんな時でも子供の味方でいないといけなかったのに」
「もう逃げないわ。ごめんなさい、どうか、どうか、ママを許して」
母親は泣きながら自分が間違っていたことを謝罪し、迷子と再び暮らすことを希望する。
迷子はただ、黙ってPC達を見ている。
・アイリンはどうしたい?
→分からないと答える。でも、これからこの顔で生きていくのは少し怖い、とも告げる。
・アイリンが選ぶんだ
→選べない様子を見せる。ただ俯いている。
アイリンの心は揺れている。
自分の存在が母親を苦しめるのではと思っており、また母親に捨てられるのではとも恐怖している。しかし母親が恋しいのも事実。
これからこの恐ろしい顔で生きていくことにアイリンは恐怖を覚えている。顔が崩れたことで友達がいなくなったこともトラウマとなっている。
裏の世界でのPC達とのひとときは、アイリンにとってとても楽しかった。
しかし、表の世界への未練も断ち切れないでいる。
PCは迷子を元の家に帰すか、裏の世界に連れて帰るか二つの選択を迫られる。
選択を終えたらエンディングへ。
<エンディング>
▼アイリンを元の家に帰す
アイリンと母親が抱き合う。事情を理解した警官からは謝罪される。
アイリン「アイリンは、ママのことおこってないよ」
母親「ごめんね、ごめんねアイリン……。あなたの好きなごはんを作ってあるの。お腹空いたでしょう、一緒に食べましょう……」
手を繋いで家に帰っていくアイリンと母親。
最後にアイリンがPC達へ振り返り、笑いながら手を振った。
「またね!」
さようなら、ではなく。
もう日が暮れた。PC達も裏の世界へと戻るため、きびすを返した。
▼アイリンを裏の世界に連れて帰る
PC達はアイリンの手を握る(あるいは抱き上げる)。
アイリン「アイリンは、ママのことおこってないよ。でもね、ばいばい」
母親が泣き崩れる。警官がPC達を止めようとする。
だがそれよりも早くPC達はアイリンを連れてその場から逃走――路地裏へと、裏世界へと、帰還する。
今日からアイリンは裏の世界の住人だ。PC達の友達であり、隣人だ。
アイリンはどこか吹っ切れたような、肩の荷が下りたような清々しい笑顔をPC達に見せた。
「よろしくね」
もう二度と、少女は誰かから拒絶されたり捨てられたりすることはなくなるのだ。
それは彼女にとっての幸福ではないだろうか?
PC達は、新たな隣人と共に裏の世界へと歩いて行った。